Days on the Rove

好事家風情の日常。読書と散歩と少々の酒。

Event Review 2022/09

名称:THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦
場所:茅ヶ崎市美術館
入場料:¥800
期間:2022/09/10〜11/06(〜10/10・10/12〜一部入替)
見学日:2022/09/11
図録:あり。購入。¥2500

新版画、あんたも(相変わらず)好きねえ…という印象になりそうだが、好きな物はしかたがない。

版元である渡邊庄三郎の名が冠されているので渡邊木版美術画舗の新版画のみの展示だが、それでも十分に見応えがあった。

カペラリ、バードレット、伊東深水の新版画をじっくり見られたのは吉。名取春仙、高橋松亭、山村耕花、小原古邨などを再認識できたのは良かった。そういう意味で、新版画=風景画というわけではなく、浮世絵と同じく役者絵・美人画や花鳥画もある(人物画や花鳥画はどうにも疎いのは自分の興味の対象外だったから)ということを理解する。浮世絵を浚ってインスパイアしたのが新版画ということなのだろう。庄三郎が歌舞伎などにもシンパシーがあったのも理由のひとつか。

笠松紫浪や石渡江逸を見られたのも良かった。とくに神奈川の新版画絵師である石渡江逸は追いかけていきたい作家のひとり。版画以外の活動はよくわかっていないみたいなので、そういう所も気になる。

見知らぬ絵師(なかには消息不明の方も)の絵もいくつか。北川一雄や柳原風居。生没年不詳とのこと。こういうのを丹念に追いかけられるのは良し。

技法としてのばれんの使い方。使い方で表現を起こすというのを今回認識できた。使い方の差を見ていくというのは今後の課題。

新版画らしさと思っていた線刻の太さは初期からではなかったことに驚き。新版画って、スタイルではなくて浮世絵と西洋絵画からインスパイアされた日本の木版画のスタイルってことか。
とはいえ、アニメ絵やCGっぽさも感じるのだけどね。案外そういう系譜もあるのではと。
そういえば東京人の新版画特集号で江口寿史が現代漫画・イラストレーションとの関係を述べていたのを思いだす。

 

 

小原祥邨の「金魚鉢に猫」がいい。単に金魚を見つめる猫という不穏な雰囲気を持った絵と思っていたが、じつは吉祥画なのかもしれないという話。猫の中国語での発音の同義と「金」と「魚」の発音の同義から推察された。そういう読み解きが面白い。

この展示でのキャッチに使われているサーフィンをしている絵はハワイの物だったのね。茅ヶ崎の物だったら面白かったのになぁ。でも、茅ヶ崎での展示ならこの絵をトップに据えるよね。

後期展も行こうかな。前期のチケットで割引もあることだし。

蛇足も蛇足だが、茅ヶ崎駅の南側(海より)をはじめて歩いて、鵠沼あたりと同じ地形的雰囲気を感じた。海岸平野の砂丘地帯みたいな雰囲気かな。そういう意味で地形散歩してみたい場所だった。
茅ヶ崎市美術館横の高砂緑地にある茶室・書院の「松籟庵」にある池泉は湧水由来なのかとか。

名称:堀内誠一 絵の世界
場所:神奈川近代文学館
入場料:¥600
期間:2022/07/30〜09/25
見学日:2022/09/25(最終日!)
図録:あり。未購入。堀内誠一 絵の世界

堀内誠一。デザイナーでアート・ディレクター。そして絵本画家。子供の頃に読んだ絵本からのファン。そして、澁澤龍彦との交流から彼の旅行記を読むようになった人。

なお、以前も回顧展はあって、尋ねたことがある。

nekotuna.hatenadiary.jp

若かりしころに、松本竣介の画風に憧れた時期があったそうで、それがまんま松本竣介風。解説読む前に自分でもそのように思うぐらいだから、顕著なのだろうな。

堀内誠一が伊勢丹退職後にデザイン事務所アド・センターの立ち上げに参加。その事務所があったのが、渋谷の南平台あった旧内田邸。これってイタリア山公園の外交官の家ことらしい。
横浜で堀内誠一展を開催する理由づけになる…のかなwまあ、こういう関連性が面白い人なので。

蛇足だが、外交官の家こと旧内田邸には文化的文脈があるようですね。cf.渋谷文化プロジェクト

デザイン・絵本という分野で活躍したけれど、自分で出版にも興味があったのかな?という感じがしたのが、在フランス日本人コミュニティの新聞?でふねいりふねや、新聞仕立ての絵本どうぶつしんぶんなどが興味深い。

www.fukuinkan.co.jp

まあ、そもそもがマガジンハウスの雑誌群のアート・ディレクターで、ロゴもつくられた方なので、出版に興味が無いわけはないか。
澁澤龍彦や三島由紀夫も関わった血と薔薇も堀内誠一さんのADなわけで。

旅の文とスケッチがまた良い。この種の本はすベて読んでみたい。

 

 

最近、文庫版で出版されたこれは読了した。

 

絵本の原画が出版物に比べて大きいのに驚く。そういうものなのかな。

ふたごのでんしゃは本だけなのが残念(原画を見たかった!)。こすずめのぼうけんの原画は久しぶりに見たけれど、なんともやさしい絵でいい。

ミノルタのPR誌ロッコールは今回も展示。こういうグラフ誌仕立てのPR誌がつくられた時代もあったのだな。古書店で見かけたら購入してみよう。

今回の展示ではデザインや絵本の原画よりも、絵文集に心を奪われた。読み返して(当時どれを読んだのかすら定かではないが)みなくては。

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