Days on the Rove

好事家風情の日常。読書と散歩と少々の酒。

11.9尾辻克彦×赤瀬川原平 ー文学と美術の多面体ー@町田市民文学館ことばらんど

名称:尾辻克彦×赤瀬川原平 ー文学と美術の多面体ー
場所:町田市民文学館ことばらんど
会期:10.18〜12.21
入場料:¥400
見学日:11.9
図録:有り・購入。¥1000

トマソン・路上観察・考現学・今和次郎・宮武外骨・中古カメラ・桜画報などなど、自分がさまざまな影響を受けた町田在住の芸術家・赤瀬川原平(作家・尾辻克彦)の展覧会。期間中の10.26に亡くなり、そのまま追悼展になるという…。なんという偶然というかタイミングというか…(赤瀬川さんは偶然好きでもあった)

まずは林丈二さんにあてた病院からの葉書が特別に展示。いろいろな意味で感慨深い。

本編最初は、町田在住が故の自宅・ニラハウスの紹介から。
路上観察仲間の藤森照信さんが設計。
屋根のニラはともかく、内部空間は居心地が良さそうな雰囲気が漂う。(昔の太陽(平凡社)の赤瀬川原平特集号で詳しく知っていたとはいえ、いいなぁ)

次は千円札裁判の記録。
芸術作品として千円札を模写したものが、紙幣の偽造に当たるとして逮捕されたときの裁判記録。
裁判の結果がどうなるかよりも、裁判そのものを祝祭に見立てたかのような大騒ぎの姿が面白い。最高裁が現代芸術の展示場になるとは。見てみたかった。
加えて梱包作品と宇宙の缶詰(カニ缶のラベルを内側に貼り付け、蓋を閉じたもの。宇宙そのものが小さな缶詰の中身となる)が見られたのは嬉しかった。

桜画報と美学校の活動。
桜画報はパロディ・ジャーナリズムだったのか。山藤章二やマッド・アマノのそれと比べたことはなかったな。原画を見て、細かい描き込みぶりに驚く。文庫版ではわからない描き込みぶり。
マッチラベルコレクションや古書値札のコレクション。古書値札のそれは、宮武外骨の滑稽新聞、スコブル、面白半分があって興味を引く。

作家・尾辻克彦としての活動。
芥川賞受賞作の原稿。賞状と記念品の時計。原稿執筆記録ノートやスケジュール帳など。
映画・利休の台本。これ、未見の作品。DVDとかになっているのかな。要確認。

カメラのコレクションとトマソンの写真群。
カメラのコレクションはマニアなら垂涎のものなのだろうが、自分には今ひとつピンと来なかった。自分のカメラ感覚が、ローライ35やコンタックスT2あたりで止まっているためかな。一時のカメラ熱が継続していれば違ったのかもしれない。
トマソンの写真群。赤瀬川原平さんのキャプションが素晴らしく良い。これがあってこその、トマソンの写真なのだなとあらためて実感する。
スライド上映を見るだけでも価値がある展示した。

直接行動主義の現代芸術家が徹底した観察者となり、さらに概念を抽出して弄ぶ…それが赤瀬川さんだったのだなとあらためて感じた。
赤瀬川さん亡き今、徹底した観察と概念の抽出ができる方はいるのだろうか。'70年代よりも混沌とした世の中を見極める人は必要なのだが。
あと、小説家・尾辻克彦の再評価は、これからの課題かなと思う。まずは小説の復刊を希望する。

千葉市美術館の赤瀬川原平の芸術原論-1960年代から現在まで-も必ず行く予定。12.23まで。チケット半券の割引が相互である模様。

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