Days on the Rove

好事家風情の日常。読書と散歩と少々の酒。

Event Review 2022/10

名称:新版画 進化系UKIYO-Eの美
場所:千葉市美術館
入場料:¥1200
期間:2022/09/14〜11/03
見学日:2022/20/09
図録:あり。購入。¥2500

またも新版画という気もしなくはないが、見れば新たな発見もあって見飽きることはない。

プレ新版画(錦絵)、版元・渡邊による新版画勃興、追随した版元(関西画壇系とか)、絵師による私家版(例えば吉田博は私家版が主)という構成。

茅ヶ崎市美術館の新版画展は渡邊木版画舗の新版画のみという構成だったが、新版画全体の歴史を知るなら、こういう構成がよいとおもう。というか、茅ヶ崎と千葉を続けてみられたのは大きい気がする。

プレ新版画では錦絵作品の山本昇雲(自分には石版画の山本松谷なのだが)を。これはこれでよいと感じた。今すがた酔いけしきとか。新版画前の渡邊が高橋松亭に書かせた錦絵もこれも良き。あやせ川の雪に見とれた。

伊東深水は女性だけではないのね(近江八景)とか、巴水の増上寺は和傘&着物の女性ではなく、洋装&蝙蝠傘の男性版(増上寺の雪)もあるという発見。カペラリと春信の関係性もちょっと面白い。

キースの藍と白に見惚れたな。様々な青の美しさ。画中に神奈川沖浪裏もあった事に気づく。この作品は今回の展示で一番の作品かもしれない。

ほか、伊藤孝之、北川一雄、古屋台軒、織田一磨など。石渡江逸も二点ほど。

非渡邊系として、北野恒富や鳥居言人を。北野恒富はまあいいとして、鳥居言人。80年代のノエビアのCMを思いだした。(まあ、あちらがインスパイアしたものなわけだが)。発禁になったという朝寝姿をみたのだが。どこが?という雰囲気なんだよね…

ja.ukiyo-e.org

煽情的かねぇ?

私家版。橋口五葉と吉田博かな。吉田博はどうやっても吉田博だなぁ。
刷りの回数がやたら多い作品(それだけ色合いは綺麗だが、手間と正確性が要求される)は私家版だからこそできたということかな。版元は介在すれば、それは許さなかったかもしれない。

最後に特集展示。プレ新版画時代に日本で浮世絵からインスパイアされて木版画をつくった。ふたりの外国人。ヘレン・ハイドとバーサ・ラム。彫摺を委ねるスタイルは浮世絵・新版画スタイルか。ジャポニズム寄りではあるけれど、これはこれでよい。

コレクション展では山本昇雲の錦絵が多数展示。なかなかでした。

図録も網羅的な内容で、新版画の基礎教科書になりそうな編集でした。

今回はじめてのんびりホリデーSuicaパスを使ったのだが、今までの休日おでかけパスよりも便利だね。パスを持っているのにSuicaで入場してしまうという失敗も無くなるので。券売機に並ばずに購入できるのもありがたい。

名称:百貨店展――夢と憧れの建築史
場所:高島屋史料館TOKYO
入場料:無料
期間:2022/09/07〜2023/02/12
見学日:2022/10/09
図録:なし

高島屋だけにとどまらぬ百貨店建築史・百貨店文化史になっていて見飽きない。あの壁一杯の年表をPDFにでもして、公開してくれないだろうか。

とやかく感想を述べるよりも、あの空間を覗くことに意味があると思う。一見の価値あり。

会場が小さいだけに混み合ってしまい、なかなかゆっくりと展示を眺めることができない場所なのだが、以前のINAXギャラリーのようなエッジの効いた展示を行うと感心している。今後とも追いかけてみたい場所のひとつかな。

名称:シネマ歌舞伎 新作歌舞伎 風の谷のナウシカ 前編
場所:109シネマズ湘南
入場料:¥2700
期間:
見学日:2022/10/23
図録:

シネマ歌舞伎って、どうなの?と思っていたけれど、小さい画面で見るより映画館のスクリーンでみるのは迫力があるね。案外楽しめた。

今回のは初演の映像。今年の七月大歌舞伎の『風の谷のナウシカ』「上の巻 ―白き魔女の戦記―」は脚本・演出が初演よりも練られたのだなと納得。
ちょっと網羅的・説明的なんだよね。

七之助のクシャナは意地悪ばあさん風で??という感じだったかな。まあ、あの憎々しさはあれでいいのだと思う。他、右近のアスベルがちゃんと物語に絡んでいる点は良かったな。松也のユパ様も彌十郎とはまた違うが良し。マニ族僧正のこころの揺れの表現も良かった。

11月の後編も見にいかなくては。つーか、原作の漫画全7巻を読まなくてはなぁ。多分2巻ぐらいまでしか読んでいないはずなので…

名称:======
場所:********
入場料:招待券により無料
期間:
見学日:2022/10/02
図録:

これだけは見た順に感想を書かずに最後に書くことにした。

マイナスの感情しかない感想なので。どこで見たのか。何を見たのかは秘す。

友人が招待券を頂いた市民劇団の舞台。友人も自分も主題は興味ある内容だったのだが…
脚本がこなれなさすぎてどうにも受け入れられなかった。60年代サブカルに永続革命論!みたいな話になっていてね…。革命運動に参加する男子学生を女子学生が母性愛で支える構造になっていて、どうにも受け入れがたい。

そもそも、その説話は母性愛ではなく、因果を知らぬ(それが仏縁である的な)無償の愛の結果がハッピーエンドであり、仏教の救いであることを知らしめる内容である。この改変ではそれが根底から覆されるのだ。

観劇の前に脚本・演出家も参加するトークイベントがあったのだが、中途で見せた演出メソッドに感心したことを恥ずかしく感じてしまったほどだ。

あとは運営がどうにも甘い印象。サークル活動ではないのだから、もうちょっとシステマティックにしようよ…。イベント運営に携わった経験故か、そういうことも気になってしまうのだよな。

友人がFBに書いた感想は、ネガティブなことには一切触れずに舞台に織り込まれた古典芸能と、脚本の元になった日本の説話(これ自体が古典芸能からできあがった物なのだが)を書いていて、さすがの感想であった。しかし、自分はあのようには書けぬ。

…自分には修行が足りないのかもしれぬ。でも、好奇心の趣くままに動く自分でも受け入れられぬ作品がある物だと知ったのは収穫か。

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