Days on the Rove

好事家風情の日常。読書と散歩と少々の酒。

Event Review 2022/11

ちょっと記事をアップするのが遅くなった。良くないなぁ。

名称:新作歌舞伎 風の谷のナウシカ 後編
場所:109シネマズ湘南(辻堂)
入場料:¥2700
期間:2022/11/11〜11/17
見学日:2022/11/12
図録:なし

先月の前編に続いて後編を。

新作でもこうやって歌舞伎的様式美で表現できるよ?どうよ?という気概に満ち、歌舞伎の表現を出し惜しみせずに魅せる作品と感じた。

菊之助・七之助はもちろん。ユパ役の松也、ミラルパ/ナムリスの巳之助、アスベルの右近(オーマもか)、ヴ王の歌六も熱演(恰好いい!)。ケチャ役の米吉は、この熱演がナウシカ役に繋がったのだなあと思うと胸アツである。なんといっても声のみの出演の吉右衛門。涙である。

あとは庭の主?の中村芝のぶがよい。声色の使い分けがね〜。

連獅子と五右衛門はわかった。ナウシカが王蟲の眼のガラスを持って踊るのは、娘道成寺?三連の笠はそうだと思うのだが。

ユパ様ジャンプも見られるとはねー。そのシーンは水芸だし。出し惜しみ無いな〜

そうそう、クロトワの長台詞などにみられる七五調のそれは、弁天娘女男白浪風つーか、黙阿弥調よね。

なんにせよ原作を読まなくちゃね。

前編・後編をみて、今年実際に見た『風の谷のナウシカ』「上の巻 ―白き魔女の戦記―」がいかにブラッシュアップされているのかとも感じたな。

名称:闇と光 ―清親・安治・柳村
場所:太田記念美術館
入場料:¥1000
期間:11/01〜12/08
見学日:2022/11/20
図録:あり。購入。¥1500

清親と安治の作品を多く見られて眼福であった…。

今年は練馬区立美術館の収蔵作品による 小林清親展【増補】-サプリメント-に続けての清親の展覧会。いや、井上安治をみられることの方が自分には大きいか。

清親の光線画の味わいをとくと眺める。陰影の表現がドットや線で表してあるのが面白い。昔の8ビットPCでグラフィックスを描いているのと同じような感じ。

人物を描くのは苦手なのかな。ちょっとへのへのもへじっぽい。

東京新大橋雨中図をじっくりと眺める。杉本章子さんの小説「東京新大橋雨中図」を思いだす。清親が主人公の小説。このなかの後ろ向きの女性からインスパイアされた小説。いろいろ感慨深い。

ニスをひいた作品群。その効果のが絶大とは思えないが、創意工夫の一部だったのだろうな。

井上安治の作品をこんなにも眺められる至福。清親の絵と並べることでさらにその違いが際立つ。清親は勢いがある(ただし、安治と比べてのレベル)が、安治はただの窓(by杉浦日向子)。

井上安治の四つ切版(通常サイズを四分割したサイズ)の東京名所真画図解はあまり感心しなかった。杉浦日向子さんが漫画で描いた「窓」と形容したのはこれのことだと思うのだが。

最後に柳村。詳細が不明な人。光線画の系譜なのだろうが、ちょっと違う感じもするんだよね。なにが違うのかな。

名称:ア マウンテン オブ ヒストリー
場所:精美堂 旧社屋1階(品川区高輪)
入場料:無料
期間:11/26〜12/01
見学日:11/27
図録:なし

SNSで偶然知った精美堂の展覧会。知った翌日には現地へ。自分の行動力に驚くわw

精美堂は新聞挿絵を木版で制作(そもそもは印章彫)からはじまり、ハンドレタリング→写植→DTPと変化した会社。今はデザイン系を中心とした会社とでもいえばよいのかな?

雑誌広告の下絵とレタリングやその印刷原板(プラ板の物もあった)や写植のガラス原板や拡大用のレンズなども展示。それらを詳しく解説頂いて大満足でした。

ツイッターにあげた写真から。

本当に精緻だと思うし、そもそもサイズを変えてわざわざ木版で掘るというのも驚きだった。

そもそものこの書体のデザインは、他にデザイナーがいるのか精美堂自身なのかは聞きそびれた。

木版母型が正しいのかな。これを元に書体をつくるという物。実際には完成しなかったようなのだが。

一枚目は普通の書体。二枚目のは和紙に印刷したとき等に起こるインクのにじみを再現するために、わざと線刻にぶれをつくっている。写真ではわかりづらいかな?

その歴史の重みと厚みとこの展示への情熱。頭を垂れるしかない。大満足の一日であった。

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