Days on the Rove

好事家風情の日常。読書と散歩と少々の酒。

Event Review 2023/03

名称:TOKYOのモールの想像力-ショッピングモールはユートピアだ
場所:高島屋史料館TOKYO
入場料:無料
期間:2023/03/04〜08/27
見学日:2023/03/05
図録:なし。無料のリーフレットあり

企画展のリンク貼れないのどうにかしてよ…

前回の百貨店展―夢と憧れの建築史に続いての高島屋史料館TOKYO。エッジの効いた展示をおこなうものだなぁ。(どうやら、以前日本郵船歴史博物館で建築関係の企画展を行った学芸員さんが高島屋史料館にいるらしい。それも理由のひとつかもしれない)
今は無き、INAXギャラリー/LIXILギャラリーっぽさを感じつつあるかな。

なにより百貨店でショッピングモールを取り上げるという不思議。まあ、二子玉の高島屋はショッピングモール扱い(玉川高島屋S.C.)なので、そこまで違和感はないものなのかもしれない。

写真やイラスト、小説、映画、アニメ、漫画、PVなどで展開されるモールの表現を通して、モールという物をあらわにしていく展示構成。

その構成自体がモールをイメージしたストリート的なのだろうし、ひょっとしたら展示で言及されていた赤瀬川原平の宇宙の缶詰を意識しているのかもしれない。バックヤードの風景やモール的植栽も並べられていて、まさにモールを再構築した展示なのではと。

展示に向かう電車の中で、(以前に見た)百貨店展で取り上げられた百貨店は都市のハブ(結節点≒ターミナルデパートみたいな)であるけれど、モールは住宅以外の都市を内包するのではなんて考えていた。それが展示のなかにゾンビ映画でモールで暮らすというシーンがあることに驚いた。
ひょっとするとモールへの欲望は、モールで暮らすということなのかもしれない(モールで生活が充足する欲望がある)という意識がチラリと浮かんだのだが、どうなのだろうか。

百貨店=デパートメントはそこで暮らす物ではなく、消費社会の発信基地(モードの発信基地)であるわけでだが、モールは生活=日常であるのではないだろうか。

で、思いだしたのが映画ブルースブラザーズのモールで主人公と警察のカーチェイスシーン。徹底的に破壊し尽くすわけだが、その「ストリート」を爆走する主人公たちがいろいろな店があることを取り上げるシーン。それこそモール的なものを象徴的しているシーンなのではなかろうか。
(あのシーンをこの展示で言及していないのはなぜなのだろうか)

あの大山顕さんの三万字の文章。壁や床に巻物を広げたように書かれた文章も当然モール=ストリートを意識しているのであろうと思う。
三万字の文章にあてられた状態なので咀嚼できていないのは自分が一番わかっている。また訪れて、読み解いていこうと思う。会期は長いからね。

大体。企画展に最終日に慌てて訪れることが多い自分が、開催2日目に訪問するなんて!自分でも驚きである。相当気になっていた展示だったのだろうなぁ。(タイミングが良かったのも理由のひとつだが)

…ところで、あの大山顕さんの三万字の文章が刊行されたりしないかね。手元で繰り返し読みたい。

キャッチに使われているモールの後ろに白い雲が沸き立つアニメのワンシーンの絵。新版画風ねとか考えていたら、東京人の新版画特集に登場されていた方の作品だった。『サイダーのように言葉が湧き上がる』イシグロキョウヘイさん。

 

この作品を見る機会を作りたいなぁ。

 

名称:また会いましょう― 横浜郵船ビル写真展
場所:日本郵船歴史博物館
入場料:¥300?
期間:2023/02/03〜03/31
見学日:2023/03/12
図録:なし

横浜郵船ビルの大規模改修工事に伴い日本郵船歴史博物館は3/31で休館に。その前の最後の展示は、その建物についての写真展。というか、本当に休館なんだよね?信じていいよね??

実際に建物の内部を観覧できないので、写真で見るしかない。そこが残念。見学会とかやらないかな…

実際に一階にカウンターがあって業務をしていた時代の写真が、銀行のそれっぽい感じに見えた。
意匠の凝り方や残された木の床の磨かれ具合に目を見張る。嗚呼、このまま残す術はなかったものか。
屋上にある塔屋が港の様子を見るための監視所?になっていたとは面白い。

どの写真だったか、郵船ビルの屋外に取り壊し最中の姿が見える写真があった。あれはきっと日本郵船の倉庫、BankART NYKの建物よね…。嗚呼。

興味深い写真が多かったので大満足ではあるのだが、今後あの建物がどうなるのか、日本郵船歴史博物館がどういう形で再建されるのか心配だなぁ。

日本郵船歴史博物館の展示を見た記憶を浚ってみる。時計×航海ー緯度ヲ発見セヨー(2018)、重要文化財指定記念 まるごと氷川丸(2016)、ザ・模型 —NYK Model Ships—(2016)、東洋汽船そのあしどり(2014)、籾山艦船模型製作所の世界 — 幻のモデルメーカーが残した商船模型(2012)、●船→建築 ル・コルビュジエがめざしたもの(2011)ぐらいかな。案外少ないな…
籾山、東洋汽船、ザ・模型(氷川丸かなにかのモデルシップが所蔵された記念だったかな)が思い出深い。
まるごと氷川丸も、船内の装飾を三越や高島屋にスキームを作らせたのが面白かった記憶がある。本当に得がたい展示だったよね…。

日本郵船歴史博物館の常設といえば、戦時徴用への怨嗟も捨てがたいところ。貨客船改造の空母とか、沈没地点のマッピングとか、ちょっと涙無しにはみられない。ああいった展示がどうなるのか…

 

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