Days on the Rove

好事家風情の日常。読書と散歩と少々の酒。

企画展・イベント感想2021/04

…またコロナ禍による休館・中止の荒波が…。見られるかぎりは見続けたいね

名称:電線絵画展-小林清親から山口晃まで-
場所:練馬区立美術館
入場料:¥1000
期間:2021/02/28〜04/18
見学日:04/03
図録:あり。購入。¥2500

最初この企画展の話を聴いた時、藤牧義夫の隅田川絵巻が見られるとはいえ、食指は動かなかった。
ただ、太田記念美術館のtweet(新版画と電線の絡み)を見ているうちに興味がムクムクとしてきたので行ってみた次第。

まずは小林清親の作品群。いいなぁ。どれもいい。いかにも明治の新風俗を描いた…って感じが。水彩画もお手のものだったようで、写生帳や作品もなかなかに見応えがある。

五姓田義松の横浜亀の橋通。鶴屋呉服店→松坂屋の店舗が描かれている。あんな処にあったんだ…(そっちかよ)

河鍋暁斎の蛙の人力車と郵便夫。あ、鳥獣戯画、と思わず声がでた。

電線(電報・電話)・郵便関係がワンセットになった錦絵。あとからTwitterで知ったが、郵政博物館の所蔵。納得。

三代歌川国貞と山田みのるの作品。浅草十二階と電柱。山田みのるの作品は、十二階とその裏手のこ汚い住宅がテーマか。

 富士山と電柱。ここも清親が登場。コーナータイトルに「富士には電柱もよく似合ふ」って、おい。浮世絵の垂直指向を思うと電柱もそういうアレなのか。富士山、十二階、(後々の展示作品に)八坂の塔…。なるほど。

岸田劉生の作品群。代々木のどのあたりなのだろうか。その場所に繰り返しモチーフにする画趣があったのだろう。俺には、決してそうは見えないのだが。
次に鵠沼での作品。劉生は鵠沼に住んでいたこともあったからね。

藤牧義夫の隅田川絵巻第二巻。久しぶりだな。2012年の神奈川県立近代美術館の藤牧義夫展以来か。 それ以前のモボ・モガ展でも見ているはずだが、記憶にないからな。

nekotuna.hatenadiary.jp

パースを中心に眺める。ひと続きのようでいて、どこか断絶があるようにも見える。広角レンズで撮影した写真を無理矢理繋げたような見方もできるような…(って、2012年の記事でも同じようなことを書いている…w)

新版画の巴水と吉田博の違い。電柱を描く・描かない。視点の違いなのかな…。ここで巴水の作品を眺められるなんて…。他織田一磨や石井柏亭の作品もいい。

木村荘八の挿絵。もう一度木村荘八の作品も読み返さないと。一部の作品に考現学要素を感じたのだが、考現学勃興期と木村荘八の活躍の時期は被っているのかな。

佐伯祐三の下落合。朝井閑右衞門の電線風景の作品群。これは田浦の京急と横須賀線が交わる場所らしい!なるほど!で、収蔵は横須賀美術館。なるほど!(鼻息)
電車の中から眺めるだけの場所だけど、一度現地に行ってみるのも悪くないかもしれない。

松本竣介の作品が一点だけ。嗚呼、何かしら腑に落ちた気が。うまく説明できないのだが。Y市の橋にも通じる何かを感じたように思う。
決してスケッチではない画風。単純化…でもないな。心象風景風のグロテスクさを孕んだ画風とでもいえばいいのか。単なる抽象絵画ともいいたくないのだが。
Y市の橋のそういう視点で捉えると、理解できるような気がしてきた。

電線の絶縁体である碍子がズラリと展示。陶器製でなんらかの意図(数学的なモデルか?)があるのだろう。その造形に驚かされる。随分と滑らかな形をしているのね。

参考展示のデンセンマン音頭のジャケットと、無電柱化民間プロジェクト実行委員会のキービジュアルには笑わされた。あのキービジュアル、むしろ醜悪ではないとおもうのだが…。(アンチのプロパガンダがかえってその魅力をしめしてるという…)

なぜ電線を描くのか、というのがテーマなのだと思うが、その答えは見つけられなかった。
新風俗としての電線から、そのものになんらかの興趣を思える作品へ変化したということかと想像していたが、どうなのだろう。ただ、垂直方向への志向としての電柱→電線を描くは確かにあるような気がした。

というわけで、電線のある風景が醜悪なのか画趣あるものなのか、自分の眼で判断すべきだと思う。自分自身は電線/電柱だけでなく鉄塔にも同じような意識が働くのだろうと推察した。

自分の頭の固さを解きほぐしてくれるような企画展でした。

 

 
 
 
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練馬区立美術館前で看板を収めた写真なのだが、ここに電線が映り込まなかったのは残念だった。帰宅後に写真を見て気がついたのだが、そこまで意識できれば良かったな。

前回、中村橋を歩いたのは2012年の練馬区立美術館の展示。そのときも中村橋周辺の街並みに興味を持っていたのだな。
今回、美術館の前後に周辺を歩いたのだが、古本屋、暗渠、遊歩道、商店街、(横浜などに比べれば)ほぼほぼフラットな地形などが面白かったな。

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名称:開館30周年記念 荒井寿一コレクション 川瀬巴水展
場所:平塚市美術館
入場料:¥800
期間:2021/04/24〜06/13
見学日:2021/04/25
図録:あり。購入。¥2000

開幕2日目に行ったのは、コロナの状況が悪化しているなか、休止される可能性も考えた結果。
これから先も見通しが効かないものねぇ。

そもそも今回の展示は昨年、平塚市美術館で開催予定だった川瀬巴水展がコロナ禍で中止になったものを、あらためて荒井寿一コレクションのみで再構成したもの。

荒井寿一という名前に心当たりがなかったのだが、神奈川新聞の記事で氷解した。平ルカの地元企業・荒井商事の方。我が地元とも若干の関わりがあったので、なじみ深い名前。
なるほど、それで川瀬巴水と縁のなさそうな平塚で企画展があるわけだ…

なにより再度展示を行ってくれたことに感謝。そしてこの展示はその意気に応えたかった。再再度休館なんて事態になる前に…

なんといっても東京の風景が良い。初期の東京十二題。山王、寺島。
どうしても東京(とその近郊)の絵に目がいってしまうのだが、全国どこの絵も素晴らしい。大阪高津、出雲安来清水、別府の朝など。
東京以外の風景を描くきっかけは、震災で写生帳を失った巴水を、版元・渡邊が取材旅行に送り出したから。こういう理解者&支援者がいてこそ浮かぶ瀬もあるのだな。

東京二十景。芝増上寺、新大橋(電線絵画ですねw)、大森海岸、馬込の月。もうね、これだけみられれば!もう!

メモ:輪郭の細さ。初期の輪郭の太さ(たぶん)。後期の物の方がより新版画らしく見えるね。
立体的に見える花・雲・緑。色を細かくするだけではなく、実際に和紙を毛羽立たせているのかな?(そんな技法あるのかね?近くで見ても、立体的で影が実際にあるようにしか見えないので…)

東海道風景選集。馬入川はともかく、相州前川の雨の前川ってどこだろう??
(ググってみたら、国府津駅の東京寄りのあたり。宿場町風の風景になっていたのだが、そういうものなのか)

日本風景集。奥入瀬の秋。とにかく紅葉が美しい。

築地本願寺の夕月。鶴が丘八幡宮。相州七里ヶ浜。鎌倉大仏。このあたりはまさしく巴水の自家薬籠中の物だろう。

元箱根見南山荘風景集。元箱根見南山荘とは岩崎小弥太別邸のこと。現在は小田急山のホテル。山のホテルといえばツツジ。そのツツジの描かれたものが素晴らしい。華やかさと情緒。これは山のホテルにも実際に行ってみなくては。

清洲橋。これもまた。モダンな風景と新版画。モダンな風景も描くあたりが電線絵画というくくりに入るだけのことがあるのだろうな。

晩年の作品(戦後)。みののくに谷汲寺。埼玉県小野原。小野原は新版画のひとつの到達点と言えるのではあるまいか。巴水らしい叙情性は乏しいが、新版画の平明感はよく理解できる作品だとおもう。
というか、前後の作品は新版画の到達点を感じ取れる作品が多いな。春の夕(上野東照宮)などもそういえるだろう。平明感あふれる塔の姿と、ぽってりと咲き誇る櫻の花。嗚呼。

晩年の作品はどれも素晴らしいのだが、その中にあった野火止平林寺をみて思いだした。この作品が新版画を知るきっかけになった作品だと思う。どこ見聞きしたのかは思いだせないのだが。(そういえば平林寺も行ったことがないな…)

本や雑誌、カレンダーやポスターなどの仕事。人物画が多いが、これがなかなかの傑作揃い。歌舞伎役者のシリーズは本当に素晴らしい。それぞれの役者の特徴を捉え方がうまい。歌舞伎に詳しくないのが残念に感じるぐらい。
人物画がうまい理由のひとつに、川瀬巴水が鏑木清方の門下生だったことも理由の由。納得である。

鉄道省国際観光局での仕事。こういう仕事もあったのだなぁ。吉田初三郎とはまた違う観光関連の仕事。台紙は印刷でその上に木版画を張り込むというもの。
ほか、カレンダーや絵葉書が多数。

Radio Japan(短波放送)の受信確認書。これ、ベリカードのことだよね?こういう仕事もあったのだなぁ。

初日カバーという郵趣趣味があったらしい。新規発行の切手と発売日の(土地のものなら当然その土地の郵便局の)消印。その台紙に切手の図案にちなんだ絵柄。それらも展示。
これに関して、Twitterで初日カードとマキシカードの違いをご教授頂いたので、貼り付けておく。

 こういう郵便趣味の世界は、本当に知らないなぁ。興味深く眺めていましたわ。

最後に川瀬巴水の版画を作る様子を、絵師、彫師、摺師それぞれの過程を記録した映画の上映。じっくり見入ってしまった。これは巴水自身がナレーションをしているというもの。版元の渡邊木版画の制作なのかな?

一年越しに展示にこぎ着けた関係者の努力に感謝です。

この春のうちに、川瀬巴水、吉田博、笠松紫浪と三人の新版画絵師の企画展を見ることができた。偶然とはいえ、濃い春だったな。

この日は、平塚往復のみ、大船で禁酒法(語弊)施行前の最後の立ち飲みを楽しんで帰宅。
しばらくは家飲みだけだなぁ…

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